生活費を渡してくれない
目次
夫婦には生活費の負担義務がある

夫婦には互いに協力し扶助しなければならない義務があります(民法752条)。
この義務の中には、配偶者に生活費を支払う義務が含まれています(婚姻費用の分担義務)。
共働きの夫婦であっても、夫の収入の方が高い場合は、妻は夫に生活費の支払いを求めることができます。
同居中の場合でも、夫が収入に応じた相応の生活費を負担していない場合は、生活費の支払いを求めることができます。
生活費はいくら支払ってもらうことができるか
では、生活費はいくら支払ってもらうことができるのでしょうか。
夫婦間で金額について合意ができない場合は、裁判所で使用されている算定表の金額が一定の目安になります。
平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所
例えば、未成年の子が2人いて、2人とも14歳以下の場合は、それに応じた算定表(表13)を参照します。
義務者(年収が高い方・支払う側)の税込年収が600万円、権利者(年収が低い方・支払ってもらう側)の税込年収が400万円の場合は、表13で年収がクロスする所を参照します。
そこに記載されている金額(ここでは10~12万円の範囲)が支払ってもらう婚姻費用の目安になります。
もちろん夫婦間で合意ができれば、算定表の金額よりも高い金額を支払ってもらうことも可能です。
生活費をどのように請求するか
では、生活費を支払ってもらえない場合、どのようにして支払ってもらえば良いのでしょうか。
この場合、以下のような順序で請求をしていくことになります。
| ① 話し合いを行う ② 調停を申し立てる ③ 審判で決定する |
話し合いを行う
まずは夫婦間で話し合いを行います。
夫が生活費を支払ってくれない理由が、本人の収入の減少の場合は、妥当な生活費の額はいくらか、いくらであれば支払うことができるか等について話し合いを行います。
また、特に理由がないのに支払ってくれないような場合は、法律上、婚姻費用の負担義務があることを相手に説明して説得してみます。
支払いがない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てること、最終的には家庭裁判所の審判で支払いが命じられることも説明します。
相手に算定表を示して、支払われるべき婚姻費用の相場を伝えることも有効な場合があります。
婚姻費用の金額は、算定表の金額が目安になりますが、これに拘束される訳ではありません。
双方が合意した金額であればいくらであっても構いません。
もし話し合いで金額が決まった場合は、合意内容(金額や支払う期間など)を書面で残しておくことが望ましいでしょう。
調停を申し立てる
話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に対して婚姻費用の分担を求める調停を申し立てることを検討します。
調停とは、家庭裁判所において調停委員を間に挟んで話し合いを行う手続きです。
調停も話し合いですが、第三者である調停委員や家庭裁判所が関与することで、当事者間での話し合いに比べ、スムーズに話し合いが進む場合が多いです。
最終的に審判で金額が決定する
調停でも話し合いがまとまらない場合は、審判手続に移行することになります。
審判手続とは、双方の主張や事情を考慮して家庭裁判所が婚姻費用の金額を決定する手続です。
決定した金額に不服がある場合には、審判に対し即時抗告をすることにより、高等裁判所で争うこともできます。
婚姻費用分担の保全処分とは
調停を申し立ててから婚姻費用が決定するまでの期間は事案によりますが、話し合いでまとまらず相手方が争ってくる場合、1年程度の期間がかかることも珍しくありません。
しかし、1年も生活費が払われないと妻側は生活が立ち行きません。
早急に婚姻費用を確保する必要があります。そこで、婚姻費用の分担の調停を申立てるのと同時に、婚姻費用の分担の保全処分を申立てることが考えられます。
婚姻費用分担の保全処分とは、早く生活費が支払われないと困窮してしまう等の緊急性がある場合に、婚姻費用として仮に一定額を支払うよう決定を求める手続きです。
保全処分の手続では、申立人が、①婚姻費用の分担請求が認められる蓋然性があること、②保全の必要性を疎明する必要があります。
相場以上の金額が認められるか
家庭裁判所での話し合いでは、婚姻費用は算定表の範囲内で決まることが多いのが実情です。
もっとも、それだけで金額が決定するわけではありません。
婚姻費用には、夫婦の食費、住居費だけでなく子どもの教育費、医療費等様々な費用が含まれていますが、含まれていない費用もあります。
よって、費用の内容によっては、婚姻費用に加算して請求することが可能です。
上乗せして請求することが考えられる費用として代表的なものは私立学校の費用です。
子どもが私立学校や塾に通うことに、夫の同意があった場合は、これら費用を加算して婚姻費用を請求することができます。
一方で、夫婦が別居した後に子どもが私立学校に入学し、夫がそれに反対していた場合は、私立学校分の加算が認められないことがあります。
私立学校に進学するような場合は、事前に夫に相談して同意を取り付けるようにしておきましょう。
強制執行により回収することも
婚姻費用の金額が決定しても、相手方が決まった金額をきちんと支払わない場合があります。
特に、協議や調停といった話し合いでなく、審判で金額が決められた場合は、相手方がその金額に納得せず、支払いを拒否することがあります。
そのような時、相手方から強制的に婚姻費用を回収するためには、強制執行の手続きを行う必要があります。
強制執行とは、相手の財産を差し押さえてそこから婚姻費用を回収する手続きです。
強制執行として多いのが、相手の給与の差し押さえです。
相手の給与を差し押さえる場合、原則として給与の手取り金額の2分の1までを差し押さえることができます。一度、給与に対し強制執行をすると、毎月強制執行をする必要はなく、相手方の勤務先から直接振り込んでもらえるので回収が容易です。
まとめ
婚姻費用の請求は、生活費を確保するためにとても重要なものです。
その金額は、どのような事情を主張していくか、他にどのような費用が請求できるか、といったことで変動します。
一度、婚姻費用額が決定すると、決定時からの事情変更が認められない限り金額の変更は出来ません。
婚姻費用請求で損をしたくない、確実に回収したいとご希望の方は、まず一度弁護士にご相談ください。
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