親権について

親権とは

親権とは、父母の養育者の立場からくる権利義務の総称で、①子を監護教育する権利義務(身上監護権)と、②子の財産を管理する権利義務(財産管理権)の双方の内容を含むものです。親権には、権利だけなく義務を伴います。

具体的な親権の内容としては、身上監護権(民法820条)、居所の指定権(民法822条)、職業許可権(民法823条)、財産管理権(民法824条)が民法に規定されています。

未成年の子供がいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚することができません。2026年5月までに共同親権の制度が施行される予定になっていますが、それまでは父母のどちらかを子の親権者と決めてからでなければ離婚することができません。

「離婚後も子どもと一緒に生活したい」「相手に子どもを育てて欲しくない」「跡を継がせるために親権が欲しい」「名前を残したい」などの様々な理由で、子どもの親権をめぐって夫婦間で大きな紛争になることは決して珍しくありません。

親権者を定める判断基準とは?

家庭裁判所では、親権者を指定する場合には、以下のような基準で判断をします。

乳幼児の母性優先

乳幼児については、特別の事情がない限り、母親の監護が優先されるべきという考え方です。
もっとも、最近は父母の役割も変化してきているので、この基準が絶対的であるとも言えません。

継続性の原則

特段の事情がない限り、すでに子の監護を続けている監護権者が引き続き監護すべきという考え方です。
務では、この基準が一番重視されていると思われます。

子の意思の尊重

子が15歳以上の場合、家庭裁判所が親権を決める場合は、子の陳述を聴取しなければならないとされています(家事事件手続法169条2項、人事訴訟法32条4項)。このため、15歳以上の場合は、子の意思が尊重されます。

また、子が15歳未満であっても、家庭裁判所は、子の意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じて、子の意思を考慮しなければならないため(家事事件手続法65条)、子の意思は一定程度考慮されることになります。

きょうだい不分離

兄妹姉妹は可能な限り、同一人によって監護されるべきという考え方です。兄弟姉妹が生活を共にすることによってお互いに得られる経験は人格形成上得難い価値があり、兄妹姉妹は分離すべきではないと考えられています。
ただし、この基準も絶対的ではなく、事情によってはきょうだいの親権者が分離されることもあります。

養育環境の比較

父母の監護に関する意欲、健康状態、経済的・精神的家庭環境、居住環境、教育環境、子に対する愛情、実家・親族友人の援助等の有無などが考慮されます。

子の奪い合いになるケースもある

家庭裁判所では、上記の基準を複数用いるなどして子の親権者を判断することになりますが、その中でも継続性の原則を重視していると考えられています。

このため、離婚に先だって別居する際に、どちらが先に子の監護を始めたのかということが重要となり、このため双方親権者となることを希望する父母が、離婚前に子を奪い合うというケースもあります。しかしながら、そうなれば子が親権争いに巻き込まれてしまうことになり、子の利益に反する結果となりかねません。

このため、父母としては、子の利益を最も優先して考え、双方で話し合いを重ねて円満に解決することが最も望ましいと思われます。親権者になることができなかった親は、例えば、面会交流を充実させたり、その他、物心両面で子をフォローするなどして、親子の良好な関係を築いていくことに目を向けるべきと言えるでしょう。

子の幸せを一番に考えて判断しましょう

親権者が一旦決まった後、親権者を変更することは非常に難しいです。
親権者の変更には家庭裁判所の審判が必要であり、家庭裁判所が親権者を変更するのに十分な理由があると認めなければ、親権者を変更することはできないのです。

離婚を急ぐあまり、相手の言うままに親権を相手に渡してしまうと後悔することになります。このため、親権については、十分に相手と話し合った上で、父母ともに子どもの幸せを一番に考えて判断することが大切です。

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忙しい方や,ご自身で対応することが難しい方の場合,弁護士に依頼すれば,離婚問題に関するすべての交渉・手続きを弁護士に任せることができます。例えば,離婚協議書を作成するだけだからと言って司法書士に依頼しても,その後,相手との話し合いがこじれてしまった場合には離婚調停や訴訟手続を行わなければなりませんが,それらの手続を代理して行えるのは弁護士だけなので,改めて弁護士に手続を依頼しなければなりません。 また,離婚時に決まった条件(養育費の支払いや面会交流の実現など)がきちんと履行されない場合でも,弁護士に依頼をいただければ,強制執行を行うことも可能です。 このように,離婚協議開始から離婚後のトラブルまでの総合的な問題解決を行うためにも,弁護士に相談されることは非常に有効です。司法書士や行政書士の方が,費用が安いというイメージがあるかもしれませんが,弁護士に依頼する場合とさほど費用が変わらないこともありますし,トラブルとなった後に対応しきれなくなり,改めて弁護士に依頼しなければならなくなれば,結局費用がかさんでしまいます。このため最初から弁護士に依頼するということは十分にメリットがあります。

よくあるご質問
夫との離婚協議の結果、子どもの親権と監護権をわけることになりました。この場合、 どのような手続をとればよいでしょうか?

離婚をするにあたり、互いに親権を譲らないときは、親権と監護権をわけることも選択肢のひとつでしょう。 但し、離婚届をご覧になられればおわかりのとおり、親権者を記載する欄はありますが、監護権者を記載する欄はありません。 そこで、親権と監護権をわける場合、離婚協議書に記載しておく必要があります。できれば真実性を担保するためにも、公正証書の形式で作成しておくことをお勧めします。

このたび妻と離婚することになりました。未成年の子どもの親権は妻に譲ることにしましたが、子どもには自分の氏を名乗らせたいと考えています。 そこで、妻との間で、離婚するにあたり、子の氏を変更しない旨の約束をしようと思いますが、そのような約束は有効なのでしょうか?

親権者にならなかった親が子どもの氏について制約を加えることはできません。氏は当事者で自由に決められることではなく、社会的に個人識別、家族識別をする重要な要素だからです。したがって、ご質問のような約束をしたとしても、そのような約束は無効です。 ただし、子の氏を親権者ではない親の氏にする方法がないわけではありません。具体的には、①子の氏の変更手続を放置する、②子の成人後、1年以内に元の氏へ変更する(民法791条4項)等の方法があります。 いずれにしても、子どもにとって何が一番よいのかという観点から対応されることが望ましいでしょう。

わたしは元夫と離婚をするに際し、元夫と関わりを持ちたくないと思い、養育費を請求しないことを条件に私が子どもの親権者となることに同意してもらいました。しかしながら、その後、経済的に生活が苦しくなり、元夫に養育費を負担してほしいと考えています。このような場合でも、元夫に対し養育費を請求することができますか。

子どもは扶養権利者として、親に扶養を請求する権利があります。この子どもの扶養請求権を扶養義務者である親が勝手に放棄することは許されません(民法881条)。 仮に養育費を請求しないと約束しても、その内容は子の福祉を害するものであり、子にとって甚だしく不利益なものといわざるを得ません。 あらためて、あなたは元夫に対し養育費を請求することができます。

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