共同親権で親権を単独行使することができる場合
共同で親権を行使することが原則
改正法は、離婚後に父母が共同親権者となった場合は、共同で親権を行使することを原則としています(改正民法824条の2第1項)。但し、以下の場合は、一方が親権を単独行使することになります。
①他の一方が親権を行うことができないとき(同項2号)
②子の利益のために急迫の事情があるとき(同項3号)
③監護教育に関する日常の行為をするとき(同条2項)
「他の一方が親権を行うことができないとき」とは
これについては、改正前の民法にも同様の規定があり、これと同趣旨の規定となります。「他の一方が親権を行うことができないとき」とは、具体的には、他の一方が長期旅行、行方不明、重病、親権喪失・親権停止・親権辞任等により親権を行使できない場合が想定されます。
急迫の事情があるときとは
子どもの利益のため急迫の事情があるときも、親権の単独行使ができるとされています。
「急迫の事情があるとき」とは、父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては親権の行使が間に合わず、子どもの利益を害するおそれがある場合をいいます。
具体的には、以下のような場合が該当すると考えられます。
【急迫の事情に該当する例】
・DVや虐待からの避難(子ども転居を含む)をする場合(被害直後に限らない)
・子どもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
・入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合等
日常の行為とは
子どもの監護教育について「日常の行為」であれば、親権の単独行使が認められます。
この「日常の行為」の例は、以下のようなものとされています。
【日常行為に当たる例】→単独行使が可能
・食事や服装の決定
・短期間の観光目的での旅行
・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定
・通常のワクチンの接種
・習い事の決定
・高校生の放課後のアルバイトの許可等
他方、「日常の行為」に当たらないのは、以下のようなものとされています。
【日常行為に当たらない例】→共同行使が必要
・子どもの転居
・進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む)
・心身に重大な影響を与える医療行為の決定
・財産の管理(預金口座の開設など)
共同親権者間で意見が対立するとき
例えば、共同親権者間で子どもの進路などで意見が対立した場合、親権を共同行使するのが原則であるため、まずは父母間で協議を行うことになります。しかし、父母間で意見がまとまらない場合は、その事項に関する親権行使者(父母の一方)を家庭裁判所に決めてもらいます。例えば、進路決定について母が親権行使者に指定された場合は、母が子どもの進路を決定します。
ただし、進路の決定時期が迫っており、家庭裁判所の判断を待っていると子どもが進学できないなどの急迫の事情があれば、親権の単独が許される場合があると考えられます。
最後に
共同親権の導入にあたっては、裁判所の運用に左右されるところが大きいこともあり、子の監護・親権をめぐる紛争の激化が想定されます。
離婚を考えているが「親権がどうなるのか不安」といったことでお悩みの場合は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
関連記事
参考資料:法務省民事局「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」001428137.pdf