離婚をみすえたモラハラ夫への対応策
1 はじめに
弊所では離婚のご相談を受けることが多くありますが、相談者から、夫の日常的な言葉や態度等により精神的な苦痛を負う、いわゆる「モラハラ」について悩みを打ち明けられるケースが非常に多くなってきています。
モラハラは、他人に相談して初めてその行為がモラハラに当たるのだと思い至るケースも多く、夫からそうした態度を取られる自分自身に何か原因があるのではないかと思い悩まれる方も大勢いらっしゃいます。夫からのモラハラによって体調を崩し、心療内科を受診されている方も珍しくなく、日常的に夫と接しなければならないこと自体が大きなストレスの原因となっているようです。
夫からのモラハラが続いていても、子育てや経済的な不安から、夫と同居して生活し続ける場合が多く見受けられます。そうした中で、何とか夫と離婚して、新たな生活を送ることができないかというお悩みを持つ方に対し、離婚に向けてどのような準備が必要なのかについて順をおって説明していきます。
2 離婚の準備について
1 別居の検討
離婚の準備の第一歩は、夫と別居することです。同居したままでは離婚の手続きを進められないという訳ではありませんが、モラハラの方は、自身の主張を一方的にぶつけてくるだけで、離婚の話合いに応じない傾向にあります。
そのため、まずは夫と距離をおいて、夫と直接会わなくて良い状況を作り、話合いをしやすい環境を整える必要があります。また、夫と顔を合わせなくなることで、劇的に体調が良くなる方も少なくありません。これらの点から、モラハラ夫と離婚を考えている方には、まず別居を検討いただくようお伝えしているところです。
この別居のタイミングで弁護士に依頼をして、離婚交渉の窓口を完全に弁護士に切り替える方も多く、弁護士に依頼をする一つの節目といえるでしょう。
2 別居前にするべき準備
離婚をする場合、財産分与の話し合いは避けて通れません。夫がどのような財産(預金、株式、不動産、保険など)を持っているのか分らないまま自宅を出てしまうと、後からこれらを調べるのは事実上困難です。そのため、自宅を出る前に、夫がどのような財産を持っているのかを把握しておくために、例えば預金であれば銀行名、支店名、口座番号を控えるといった準備をしておく必要があります。
また、後述する婚姻費用の請求にあたって、夫の直近の収入が分かっていた方が手続きをスムーズに進められます。そのため、源泉徴収票等の夫の直近の収入が分かる資料をコピーしておくことを推奨しています。
別居前の準備はその後の離婚の話合いを進めて行くうえで非常に重要となりますので、別居する前に一度弁護士への相談をご検討ください。
3 生活費の請求
別居後、離婚が成立するまでは、夫に対し生活費として「婚姻費用」の支払いを求めることができます。婚姻費用は直近の双方の収入を基礎として計算されますので、正確にその額を計算をする上で夫の収入資料(源泉徴収票、所得証明など)が必要となってきます。
夫に対して生活費の支払いを求めても任意に支払いがなされないような場合には、調停の申立てを検討しなければなりません。調停を申し立てれば、原則として申立日の属する月から婚姻費用の支払義務が生じます。別居後に夫から生活費が支払われないようであれば、早急に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てていただくようお伝えしています。
4 弁護士へ依頼するメリット
離婚の話合いが難航することは事案の性質上多々ありますが、特に相手方がモラハラ夫の場合には、その可能性が高まります。夫が自身の非を一切認めようとせず、「離婚の話合いなど応じない。」「勝手に自宅を出て行っておいて、なぜ自分が妻に生活費を渡さないといけないのか。」「離婚するとしても自分の財産を渡すつもりはない。」などと言って、交渉に応じない、あるいは都合のいい主張をするケースが多く見受けられます。
相手方がこうしたモラハラ夫の場合に弁護士に依頼するある意味最大のメリットといえるのが、モラハラ夫と直接会う必要も話す必要もなくなるという点です。弁護士に依頼をした場合には、夫との交渉窓口が完全に弁護士に切り替わります。ご自身で交渉する必要がなくなり、気持ちがとても楽になったというお声は非常によく頂きます。
また、離婚にあたっては、財産分与、慰謝料、養育費、親権、面会交流、年金分割など考えなければならない事項が多く、法的な知識が問われる場面も少なくありません。そうした知識が少なかったがゆえに、不利な離婚条件を飲んでしまったという事態を防ぐためにも、できる限り早いタイミングで弁護士への相談をご検討ください。