裁判離婚
目次
離婚訴訟になる場合
離婚調停を申立てたものの、調停が不成立に終わった場合は、離婚訴訟を起こして離婚を求めることになります。
逆に言えば、離婚案件については調停前置主義が採られていますので、調停を経なければ離婚訴訟を行うことはできません。
日本における離婚の約88.3%が協議離婚、約8.3%が調停離婚、離婚訴訟を提起し、判決離婚は約0.9%、裁判手続上での和解離婚は約1.3%となっていますので(令和2年、「離婚に関する統計」の概況より)、離婚訴訟による離婚がいかに少ないかが分かります。
離婚訴訟の提起
離婚調停が不成立になった後、離婚訴訟を提起するには、訴状を管轄の家庭裁判所に提出して行います。管轄裁判所は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所になります(人事訴訟法4条1項)。
離婚訴訟事件の訴状(裁判所)
離婚調停が不成立になった後、いつまでに離婚を訴訟を提起しなければならないという決まりはありません。しかしながら、調停が不成立になった後、あまりに期間が開きすぎると、調停前置主義の原則から再度調停からやり直さなければならない場合もあります。
離婚調停が不成立になり、裁判で離婚が認められるような離婚原因も特にない場合は、調停が不成立となって終了した後、離婚訴訟を提起することなくそのまま現状を維持するという場合もあります。
離婚訴訟はどのくらいの時間がかかるのか
離婚訴訟の平均審理期間ですが、平均で14.1か月となっています(令和3年、「人事訴訟事件の概況」より)。つまり、平均的な事案でも裁判が終わるまで1年以上の期間がかかる可能性があります。
財産分与その他で争点が多かったり、相手が細かい主張をしてくるようなケースでは、数年かかることもあります。また、判決が出ても上訴され、最高裁判所まで争われると5年程度かかるような場合もあります。
裁判になると、訴訟に提出する書面や証拠の準備のため、多大な時間や労力が必要となります。また、裁判で紛争状態が続くこと、相手から提出される書面の内容が自分の認識と大きく異なること等で、精神的な負担も非常に大きくなります。
どのような事情があれば裁判で離婚が認められるのか
離婚訴訟では、どのような事情があれば離婚が認められるのでしょうか。離婚が認められるのは、民法770条1項で定められた5つの離婚原因のどれか一つに該当することが必要となります。
(裁判上の離婚) 第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。 |
不貞行為
配偶者以外の者と、自由な意思に基づいて性的関係を結ぶことをいいます。いわゆる浮気や不倫をすることです。性交渉が一時的なものか継続しているか、愛情が有るか無いかは関係ありません。
悪意の遺棄
同居・協力・扶助といった夫婦間の義務を、正当な理由なく履行しない場合をいいます。例えば、ギャンブルに興じて働かない・生活費を渡さない・勝手に家を出てしまったなどがこれに該当します。
3年以上の生死不明
3年以上にわたり配偶者からの連絡が途絶え、生死不明な場合です。
なお、生死不明が7年以上に及ぶ場合には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることが出来ます。確定すると配偶者は死亡したものとみなされて離婚が成立します。
回復の見込みがない強度の精神病
「精神病」とは、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、偏執病、初老期精神病などの高度の精神病が考えられますが、「この精神病に罹患したら離婚原因になる」という特定の病気はありません。
また、病気の程度が「強度」と言えることが必要で、精神病により婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務を十分に果たすことのできない程度に達していることが必要です。
さらに、精神病が「回復の見込みがない」こと、すなわち不治であることを要します。
その他の婚姻を継続しがたい重大な事由
夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態に至っていることを言います。実務では、これが離婚原因として非常に良く用いられています。
例えば、婚姻を継続しがたい重大な事由としては、性格の不一致、価値観の相違、別居あるいは家庭内別居の有無とその期間、会話の有無、性生活の有無、口論・喧嘩の程度、双方の感情、修復の意思や行動の有無、未成熟子の有無、子らとの関係、子の離婚についての意見、訴訟態度、配偶者の親族とのトラブル・怠惰な性格・勤労意欲の欠如・多額の借金・宗教活動にのめり込む・暴力(DV)・ギャンブルや浪費癖・性交不能・性交渉の拒否・犯罪による長期懲役などがあります。
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められない
例えば、不貞行為をしたなど、自ら離婚原因を作った配偶者(いわゆる有責配偶者)から離婚訴訟を提起しても、原則として離婚は認められません。
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、以下の3つの条件を全てクリアすることが必要とされています。
①別居期間が両当事者の年齢および同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
②未成熟の子が存在しないこと
③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないこと
このため未成年の子がいるような場合などは、子がある程度の年齢に達するまでは離婚が認められないことになります。また、相当の長期間の別居が必要とされており、離婚が認められるには、10年程度の別居期間が必要となることもあります。
離婚裁判に際して注意しておいた方が良いこと
裁判離婚は1年以上の期間がかかることが多く、離婚が成立して財産分与を得られるまで相応の時間がかかることがあります。このため、離婚訴訟を提起するにあたり、今後も生活することができるよう準備をしておく必要があります。
例えば、仕事をしていない場合は就職先を探す、生活費の不足が見込まれる場合は、勤務時間を増やしたり転職をすることを検討します。また、相手から婚姻費用が支払われていない場合は、調停を申し立てるなどして確実に生活費を支払ってもらうようにしておきましょう。
離婚訴訟になったときは弁護士に依頼しよう
離婚訴訟になった場合は、自分で対応することは難しいため、弁護士に依頼することをおすすめします。裁判には独自のルールがあり、ルールを知らないまま訴訟の対応をすると、思わぬところで不利になる恐れがあるためです。
また、離婚訴訟は精神的な負担も大きいので、弁護士と二人三脚で対応に当たることで離婚訴訟による精神的負担が大幅に軽減されるはずです。
離婚訴訟でお悩みの場合は、是非一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。
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