高額所得者の離婚について
目次
高額所得者の離婚の特徴について
配偶者が高額所得者の場合の離婚については、以下のような特徴があります。
婚姻費用や養育費が一般的な計算方法と異なる
婚姻費用や養育費は、実務では、いわゆる算定表(平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について | 裁判所)を用いて金額を決めることが多いです。
この算定表は、夫婦それぞれの基礎収入をもとに婚姻費用や養育費の金額を算出するものですが、算定表は総収入が給与所得者であれば年収2000万円まで、自営業者だと年収1567万円までの場合しか定められていません。
このため、年収2000万円以上(自営業者は1567万円)の高額所得者の場合は、算定表を使って婚姻費用・養育費の金額を算出することができず、一般的な方法とは異なる方法で婚姻費用・養育費を決める必要があります。
慰謝料が高額になる場合がある
例えば、高額所得者の配偶者の不貞行為や暴力などにより離婚することになった場合、支払う慰謝料の金額が高額になる場合があります。慰謝料は、様々な要素が考慮されますが、義務者の年収も考慮要素の一つとなります。
このため、高額所得者が支払う慰謝料の金額は、具体的な事情にもよりますが、高額になる場合もあります。
自社株の評価が必要など財産分与が複雑になる場合がある
高額所得者の配偶者が、会社や医療法人などを経営している場合があります。結婚後に法人を設立したような場合は、その法人の株式や出資持分も財産分与の対象となる場合があります。
その場合、株式の評価や出資持分を評価して財産分与の金額を決定する必要がありますが、その評価が争いになるなど、財産分与が複雑になることがあります。
解決まで長期間を要する場合がある
配偶者が高額所得者の場合、財産分与の対象となる財産が多く、特有財産も含まれていることもあり、財産分与の計算をするのに時間がかかることがあります。
また、高額所得者の配偶者にモラハラ的な傾向があることも珍しくなく、争点とあまり関係のない細かい主張にこだわるなどして対立が大きくなり、離婚問題の解決までに長い時間を要する場合もあります。
年収2000万円以上の場合の婚姻費用・養育費について
給与所得者で年収2000万円を超える場合、自営業者で年収1567万円を超える場合は、算定表で定める上限を超えるため、算定表を使って婚姻費用・養育費を算出することができません。
このため、以下のような方法を使うことがあります。
総収入2000万円を上限とする方法
例えば、給与所得者である義務者の年収が2500万円であるような場合、年収を算定表の上限である2000万円として婚姻費用・養育費を算定する方法があります。
この方法は、義務者の年収が算定表の上限額(給与所得者の場合2000万円、自営業者の場合1567万円)をわずかに超えるような場合に使われることがあります。
基礎収入の割合を修正する方法
他の方法として、婚姻費用・養育費を算定する場合の基礎収入の割合を修正するという方法もあります。
総収入に一定の割合を乗じて婚姻費用・養育費の支払いの基礎となる基礎収入を算出するのですが、年収2000万円を超える場合は、算定表のの収入上限額に対応する割合(給与所得者の場合は38%、自営業者の場合は48%)よりも若干低い割合を乗じて基礎収入を出すという方法があります。
基礎収入の算定において貯蓄率を控除する方法
年収が算定表の上限額をはるかに超えるような場合は、貯蓄率を考慮する方法を用いる場合があります。これは、基礎収入を算出するにあたり、従来の方式どおり職業費を一定の割合(19~20%)とし、税金や特別経費を実額で差し引き、これに加えて貯蓄率が一般家庭より高いと思われることから、一定の貯蓄率を控除して基礎収入を出すという方法です。
弁護士にご相談ください
高額所得者である配偶者と離婚する場合は、財産分与、養育費・婚姻費用、慰謝料などで離婚問題での対立が大きくなる可能性があります。
このため、高額所得者である配偶者との離婚をお考えの方は、まずは一度弁護士に相談されることをおすすめします。