強制執行
強制執行とは、慰謝料や養育費など金銭の支払約束がなされたものの、その後、その約束通り支払われない場合に、強制的に相手の財産を差し押さえる制度です。離婚時に約束した金銭給付を支払わないという事案は、離婚後によくある問題です。
そのような場合は、この強制執行の手続を行って、金銭の支払いを受けることになります。
強制執行の対象となる主な財産は、
・預貯金・給与(会社勤務の場合)
・会社の売上(自営業の場合)
・土地や建物などの不動産
・自動車などの動産
といったものになります。
強制執行するためには次のようなものが必要です。
1.債務名義
強制執行をするためには、慰謝料や養育費などの金銭の支払約束が公的に証明されている文書が必要です。この約束を記載した文書を「債務名義」といいます。確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、調停調書、公正証書(執行認諾文言があるもの)などがこれにあたります。
離婚の際にした口約束や、協議離婚の際に夫婦間で作った私的な文書では強制執行することはできません。このような場合には、家庭裁判所に養育費や慰謝料の支払いを求める調停の申立てなどを行い、調停で支払いの合意をしてからでないと強制執行することはできません。
そのような手間を避けるためにも、離婚時の金銭支払いの約束を公正証書にしておくか、裁判所を通じた調停調書等にしておく必要があるのです。
2.執行文の付与
強制執行するためには、債務名義に執行文が付与されていなければなりません。
執行文とは、債務名義に強制執行できる効力があるということなどを証明する文書です。
判決と和解調停の場合には、裁判所の書記官に執行文を付与してもらいます。
公正証書の場合には、作成した公証人役場の公証人に執行文を作成してもらうことになります。
調停調書と和解調書の場合には、執行文は必要ありません。
3.債務名義の送達証明書
強制執行を開始するには、債務名義の正本か謄本をあらかじめ相手方に送達しなければなりません。
公正証書の場合は公証人役場、公正証書以外の場合は債務名義を発行した裁判所にて送達証明書を作成してもらいます。
強制執行はご自身でもできますが、法律的知識や面倒な手続きが必要になり、せっかく公正証書を作ったのによくわからずに強制執行しなかったということでは意味がありません。強制執行の手続については、弁護士にご相談されることをお勧めします。