中高年の離婚
最近、中高年夫婦の離婚が増加しています。厚生省労働省のデータによると、1990年に約2万件であった中高年(50歳以上)の年間離婚件数は、2000年までの10年間で約2.5倍の5万7000件に急増し、2010年には約6万2000件まで増加をしました。
中高年の離婚では妻側から夫側に対して離婚を言い渡すケースが多く見られますが、この中高年の離婚が増加した背景には、大きく二つの要因があります。
1.団塊の世代が中高年をむかえたこと
その要因の一つとして、高度経済成長期に結婚をした世代(いわゆる“団塊の世代”)が、中高年になったことが挙げられます。子どもが成人し、夫が定年退職したりして、それまで長年我慢をしてきた妻から夫に対して離婚を言い渡すというのが典型的なケースです。
団塊の世代の場合、「夫は外で働き、妻は家を守る」など男女の社会的な役割分担が明確にされていた時代であり、妻は、夫に強い不満があっても、「子どものため」「生活のため」として長年これを我慢してきたことが多いようです。しかし、子どもの成人や夫の退職などを機に、妻は、「これ以上我慢できない」「自分の人生を生きたい」などと考えて離婚を決断されるケースが多いようです。
2.年金制度の改正
また、中高年の離婚件数が増加した要因の一つとしては、2007年の年金分割制度の改正が挙げられます。従来は「夫婦であっても年金は別々のもの」と考えられ、特に専業主婦の妻の場合など、受け取ることのできる年金額が夫よりも圧倒的に少ないというケースもあり、これが中高年の離婚の歯止めの一つとなっていたようです。
しかしながら、2007年の法改正により年金分割制度が導入され、婚姻中に夫が支払った厚生年金や共済年金の分割ができるようになりました。このため、妻が受け取ることができる年金額が一定程度増額することとなったため、これまで離婚を躊躇していた妻側が離婚を決断するケースが多く見られるようになりました。
離婚のポイント
中高年夫婦の離婚、特に妻の側で、最も重要となるのが、離婚後の生活をどのように成立させるかということです。中高年の夫婦の場合、子どもはすでに成人となっていることが多いので、離婚するにあたっては、子ども関係の問題(親権や養育費など)は生じず、お金の問題が重要な争点となるケースがほとんどです。
特に気を付けるべき点としては、先に述べた年金分割もそうですが、退職金の問題が重要となってきます。夫が定年退職を控えている場合、夫が受け取る退職金を財産分与してもらえるかどうかということが非常に重要なポイントなのです。
夫が数年後に退職し、退職金が支給されることが明らかな場合(特に公務員や大企業に勤務しているケースなど)には、夫が取得するであろう退職金の分割が認められるケースが多いようです。しかし、退職金の取得がはっきりしない場合には、財産分与として認められないこともあります。
年金分割や、退職金の財産分与については、裁判での争い方やその計算方法など複雑な面がありますので、法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。また、夫婦間の話し合いで離婚を成立させることができる場合でも、多くの場合、離婚の条件について書面(離婚協議書や公正証書)にするのが望ましく、その書面の内容も、万一支払いが滞った場合に備えておく必要があります。このため、書面を作成するだけ、というケースでも弁護士にご相談していただくのが安心です。
まずは一度、当事務所にご相談ください。