離婚・婚姻費用等についての裁判例
目次
東京高裁令和5年6月13日決定
「未成年者が祖父母(監護親の父母)と養子縁組をしたことなどを理由に、実父が養育費の支払義務の免除または減額を求めた例」
事案の概要
元夫(実父)と元妻(実母)が離婚した際、調停において元夫が未成年の子どもの養育費として月額15万円を支払うことで合意していました。その後、子どもが元妻の両親(母方の祖父母)と養子縁組をしたため、元夫が「事情の変更」を理由に養育費支払いの取り消しを求めた事案です。 一審(原審の家庭裁判所)は元夫の申立てを却下しましたが、元夫がこれを不服として高等裁判所に抗告しました。
裁判所の判断
東京高裁は原審の判断を取り消し、元夫の養育費支払い義務の取り消し(免除)を認めました。
判決の理由
未成年者が養子縁組をした場合、子どもに対する第一次的(優先的)な扶養義務は養親である祖父母が負うことになります。離れて暮らす実父の義務が完全に消滅するわけではないものの、実父の義務は「養親が無資力その他の理由で十分に子どもを養えない場合」に限り発生する次順位(二次的)な扶養義務に後退したと判断されました。
養親となった祖父母は不動産会社の役員を務め、土地なども所有していました。裁判所は元妻側に対し、祖父母の年収や資産を証明する資料の提出を求めましたが、元妻側は一切提出しませんでした。そのため裁判所は、「祖父母が無資力等により扶養義務を十分に果たせない状態である」とは認められないと結論付けました。
元夫が第一次的な扶養義務者ではなくなり、かつ祖父母に経済力がないとも言えない本件においては、離婚調停時に定めた養育費の取り決めは実情に合わなくなった(法的な「事情の変更」が生じた)と認められました。
東京家裁令和4年4月28日判決
「妻である被告との離婚を実現させるために婚姻費用分担金の支払いをすることなく兵糧攻めともいうべき振舞いを続けた原告が有責配偶者に当たるとして、原告の離婚請求を棄却した事例」
判決の要旨
夫婦の別居期間が4年6か月を超えるため、婚姻関係はすでに破綻しており、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)がある。しかし、婚姻関係が破綻した原因は、夫が離婚を実現しようと別居した上、婚姻費用を支払わず兵糧攻めともいうべき身勝手な振舞いを続けて、婚姻関係の修復を困難にしたものであるから、夫は有責配偶者に当たる。夫の離婚請求は信義誠実の原則に反するとしてこれを棄却。
その後、控訴されたが、控訴審でも控訴棄却の判決がなされた。一審の口頭弁論終結後、夫は未払分の婚姻費用を全額支払い、審判どおりに婚姻費用分担金の支払いを継続するようになったが、それを考慮しても夫の離婚は信義則違反として控訴審でも離婚請求が棄却された。
事案の概要
平成18年に婚姻、2人の子がいる。
平成29年7月に夫が別の賃貸住宅に転出、妻は夫が新たに購入した住居に転居。
平成30年2月以降、夫は妻に生活費等として月額46万円を支払うが、妻から家賃として月額23万円の支払いを受けるようになる。
平成30年7月に夫が離婚調停申立てを行うが、同年12月に不成立となる。その後、夫は妻に対する月額46万円の生活費等の支払いを停止。
妻が夫に対する家賃を支払えなくなったので、令和元年8月に夫が妻に対して未払賃料の支払いを求める訴訟提起(後に請求棄却判決が確定)。
妻は令和元年10月に婚姻費用分担請求調停を申立て、その後審判に移行。婚姻費用未払分800万円弱と、令和3年7月から月額25万8000円の支払いを命ずる審判が確定。
令和3年4月に夫が離婚訴訟を提起。しかし夫は、離婚は離婚訴訟の口頭弁論終結時まで婚姻費用の支払いをしなかった。
















