離婚・婚姻費用等についての裁判例
東京家裁令和4年4月28日判決
「妻である被告との離婚を実現させるために婚姻費用分担金の支払いをすることなく兵糧攻めともいうべき振舞いを続けた原告が有責配偶者に当たるとして、原告の離婚請求を棄却した事例」
判決の要旨
夫婦の別居期間が4年6か月を超えるため、婚姻関係はすでに破綻しており、婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)がある。しかし、婚姻関係が破綻した原因は、夫が離婚を実現しようと別居した上、婚姻費用を支払わず兵糧攻めともいうべき身勝手な振舞いを続けて、婚姻関係の修復を困難にしたものであるから、夫は有責配偶者に当たる。夫の離婚請求は信義誠実の原則に反するとしてこれを棄却。
その後、控訴されたが、控訴審でも控訴棄却の判決がなされた。一審の口頭弁論終結後、夫は未払分の婚姻費用を全額支払い、審判どおりに婚姻費用分担金の支払いを継続するようになったが、それを考慮しても夫の離婚は信義則違反として控訴審でも離婚請求が棄却された。
事案の概要
平成18年に婚姻、2人の子がいる。
平成29年7月に夫が別の賃貸住宅に転出、妻は夫が新たに購入した住居に転居。
平成30年2月以降、夫は妻に生活費等として月額46万円を支払うが、妻から家賃として月額23万円の支払いを受けるようになる。
平成30年7月に夫が離婚調停申立てを行うが、同年12月に不成立となる。その後、夫は妻に対する月額46万円の生活費等の支払いを停止。
妻が夫に対する家賃を支払えなくなったので、令和元年8月に夫が妻に対して未払賃料の支払いを求める訴訟提起(後に請求棄却判決が確定)。
妻は令和元年10月に婚姻費用分担請求調停を申立て、その後審判に移行。婚姻費用未払分800万円弱と、令和3年7月から月額25万8000円の支払いを命ずる審判が確定。
令和3年4月に夫が離婚訴訟を提起。しかし夫は、離婚は離婚訴訟の口頭弁論終結時まで婚姻費用の支払いをしなかった。
















