離婚調停に臨まれる方へ
そもそも離婚調停とは,夫婦間で離婚するかどうか,離婚するとしてその条件をどうするかについて,夫婦間の話し合いだけでは決められない場合に,夫婦の一方が家庭裁判所に申立を行い,裁判所において,第三者である調停委員を通じて,離婚するかどうか,離婚の条件面などを話し合う手続きです。
離婚調停は,夫婦関係の調整を行う調停の一種です。
調停には上記デメリットはございますが,ご自身でも行うことができます。
そのため,調停に臨まれる方へ申立から調停終了までの流れを説明させていただきます。
離婚を考えられている夫婦の大半は,離婚したい旨の意思を伝えた上で財産分与や養育費などの条件について協議していくことになります。夫婦で協議内容が整った場合には,離婚協議書を作成したり,公証人に公正証書の作成を依頼し,晴れて離婚することになります。
もっとも,中には協議で終わらないケースが多々あります。以下のケースでは協議だけでは解決が難しい一例となっています。
・そもそも相手が協議に応じない
・当方の希望条件を伝えても反応がない
・2人で協議する度に感情的になり,協議が一向に進まない
・相手の希望が協議をする度に変わる
・離婚の話を切り出すと暴言をはかれる又は暴力を受ける
・養育費や財産分与といった条件の希望が合わない
・法外な養育費や慰謝料を請求される
・親権について両者が一歩も譲らない
・面会交流の回数や条件にお互い納得できない
・相手が不貞(浮気)を認めない
・子どもが成人するまで離婚しないといわれている
・浮気をしたり,暴力を振るった相手が,今後は反省し改善するのみ述べ,態度等が一向に改善されない場合
以上の場合,協議だけでは埒が明かず,協議を続けること自体が無意味となってしまいます。
そのため,上記ケースに当てはまる方がいれば,協議は困難と考えていただき,調停を申立てることを検討すべき段階にあるといえます。
協議離婚も離婚調停も基本的に話し合って解決をしていくという点では共通しており,話し合いがまとまらなければ調停も不調という形で終わることもあります。
しかし,調停は当事者のみならず、調停委員及び裁判官で構成される調停委員会という中立な第三者が間にはいって話し合いを行い,場所も裁判所で一定期間ごとに期日が開かれ,話し合いをしていくことになります。
期日が進行すれば,調停委員より今後の手続の流れや解決方法が示され,期日ごとに段階を踏んで進行していきますので,事実上,法外な請求や主張の変遷は認められにくくなります。
目次
離婚調停の流れ(申立から終了まで)
1 相手方の居住地を管轄する家庭裁判所に申立て
離婚調停は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行い,その裁判所で調停が行われていくのが原則です。そのため,相手方が遠方に居住している間に調停を申立てる場合には,調停への出席が負担になることは知っておく必要があります。
離婚調停を申立てる際には,家庭裁判所に赴いたり,申立用紙の書式を裁判所のホームページからダウンロードし,必要事項を記入してから提出することになります。
2 期日呼び出し
必要事項を記入した申立用紙が家庭裁判所の受付で受理された時,裁判所から双方に対し,第1回目の調停を行う日の日程調整等の連絡及び呼び出しが行われます。
申立を行う際に,どうしても都合の悪い日や曜日などがある場合,それを申立書に記載していればその日は除外され,別の日程で期日が指定されます。
3 調停委員会が調停を進行
調停は,裁判官1名と男女1名ずつの調停委員の計3名で構成される調停委員会で行われます。もっとも,裁判官は他にも複数の事件を担当しているため,調停に毎回同席することは少なく,方針などについて事前に打ち合わせた上で,実際に調停は調停委員に任せるかたちで行われていきます。
実際の所,裁判官が調停に立ち会うのは成立時または不成立により不調に終わる場合だけであることがほとんどです。
4 裁判所に到着してからの流れ
毎回の期日は,双方とも同じ日に呼び出しが行われますが,時刻を30分程度ずらしたり,待合室を別にしたりして,できるだけ当事者が顔を合わせないように配慮がされています。
調停のために家庭裁判所についた時には,まず家庭裁判所の家事調停の受付に行き,裁判所職員に出頭した旨伝えることになります。
裁判所職員に案内され,待合室で待機します。
待合室で待機していると調停委員の方が呼びに来ます。通常は,申立人と相手方が交互に調停室に入り,調停委員と話をします。
5 毎回の調停の流れ
各回の調停は,概ね2時間で,30分程度を目安に交代して調停室で話をします。2往復程度となることが多いです(申立人→相手方→申立人→相手方)。
もっとも厳密に時間が決まっているわけではなく,あくまで目安として30分程度相手方が調停室に入って話をしているというケースが多いです。
相手方が話している時間が長かったりすると,不安になられる方も多いですが,調停委員は中立な第三者ですので,どちらか一方に肩入れをしたりすることはありませんのでご安心ください。
もし,自分の待ち時間があまりにも長い場合などには率直に調停委員に伝えるとよいでしょう。調停委員よりその理由の説明を受けられる場合がございます。
6 調停の終了
その後は,おおよそ1か月から2か月毎に調停期日が開かれ,話し合いを続けていきます。期日終了時に次回期日の調整を行います。
最終的に,調停で話した内容がまとまり,当事者双方が納得するものであれば,調停成立,納得できず合意に至らなかった場合には調停不成立となります。事情によっては,申し立てを取り下げるというかたちで終了することもあります。
調停が成立した場合には,当事者が合意した内容が調停調書に記録されます。調停調書は判決と同じ効力を持ちますので,相手方が調書に決まった内容を履行しない場合には,内容にもよりますが強制執行をすることが可能です。
離婚する場合には,調停が成立した時点で離婚の効力が発生します。
調停不成立の場合には,調停委員よりその旨を示されて調停は終了します。この場合,離婚を求める側は,離婚訴訟を提起するのかどうか検討していくことになります。
7 調停の期間
離婚調停の場合,時間がかかるケースが多いです。
数回で成立ないしは不調で終わるケースもあれば,1年以上調停が継続するというケースもあります。
離婚調停に出席する際の服装
必ずしもスーツ等である必要はございませんが,過度に華美でなく,常識的な服装で臨むようしましょう。
離婚調停に出席する際の持ち物
1 自分が提出した資料,相手方が提出した資料
離婚調停申立書,事情説明書,主張書面,証拠資料等は必ずコピーを取り,手元に残しておきましょう。そして調停の際にはこれらの書類等を持参して出席するようにしましょう。調停期日の際に,これまでの主張を確認したり,相手方提出の書面に対して意見や反論を聞かれることもありますので,自分が提出した書類のみならず相手方提出の書類も持参しましょう。
2 裁判所からの呼出状,事件番号が書かれた出頭カード
呼出状には事件名,事件番号等が記載されており,出頭した際にこれを見せるとスムーズに案内を受けることができます。
3 身分証明書
初回期日に本人確認のために身分証明書の提示が求められます。そのため免許証等の身分証明書は持参するようにしましょう。
4 ノート,メモ帳,筆記用具
調停内で相手方の主張を書き残したり,次回期日までに準備しておくべきことを調停委員より伝えられるため,それを書き残すために持参するようにしましょう。
5 スケジュール帳,シフト表
第1回目の調停以降は,期日内で日程調整を行いますので,調停期日の日程調整をスムーズに行うために持参するようにしましょう。
6 認印
調停期日において裁判所に書類(受領書,取下げ書等)を提出する必要が生じる場合があります。その際,押印が求められることがほとんどですので,認印を持参しているとその場で対応できます。
7 自分の預金通帳
相手から金銭を振り込んでもらう内容の調停(養育費,財産分与,慰謝料等)が成立しそうな場合,調停調書に自分の振込先口座を記載してもらいたい場合には,預金通帳の原本か,通帳の裏表紙の写し(金融機関,支店,種別,口座番号,名義が記載されているもの)を期日に持参するようにしましょう。