父母の一方が共同親権に反対していても、共同親権となる場合があるか
(※以下は令和8年に予定されている改正法施行後の話になりますのでご注意ください。)
協議が調わない場合は裁判所に決めてもらう
父母の一方が共同親権にすることを希望し、他方が単独親権にすることを希望して、親権者が決まらない場合はどうすれば良いでしょうか。
親権について父母の協議が調わない場合は、裁判所に親権者を決めてもらうことができます。
従前は、未成年者の親権者を定めなければ離婚することができませんでしたが、新法では、親権者が決まっていなくても、親権者指定の審判又は調停の申立てをしていれば、離婚届が受理されることになりました。
そして、家庭裁判所は、単独親権のみではなく共同親権と定めることもできます(新法819条2項、3項)。
一方が共同親権に反対している場合も、共同親権となる場合もあるのか
では、一方が共同親権にすることに反対していて、父母間に合意がないような場合でも、家庭裁判所が共同親権とすることはあるのでしょうか。
結論としては、共同親権にすることもあるようです。
家庭裁判所は、共同親権にすることについての父母の合意がないことをもって一律に共同親権にしないという判断はせず、子どもの利益のために共同親権とすることが望ましいような場合は、父母の一方が同意をしていなくても共同親権とすることもあるということです。
なお、父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき、父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無などを考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは、単独親権になります(新819条7項2号)。
どのような場合に共同親権となるか
では、父母の一方が共同親権にすることを反対しているのに、裁判所が共同親権とする場合とは、どのような場合でしょうか。 例えば、以下のような場合が該当すると考えられています。
・同居している親と子との関係が良好ではないために、別居している親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定が図られる場合
・同居している親による子の養育に不安があり、関係期間による支援・関与に加え、別居している親の関与があった方が子の利益にかなう場合
・父母間の感情的な問題と、親子関係とを切り分けることができる父母の場合
・支援団体等を活用して子の養育について協力することを受け入れることができる場合
・当初は高葛藤であったり、容易に合意ができない状態にあったりしたが、調停手続の過程等で感情的な対立が解消され、親権の共同行使をすることができる関係を築くことができるようになった場合
共同親権が原則ではない
裁判所は、共同親権を原則とするというように考える訳ではないようです。諸事情を総合的に考慮して子の利益になると考えられる場合には、父母の一方の意思に反して共同親権とする場合もあるという運用が予定されています。
共同親権は新しい制度であるため、詳しくは今後の運用を見守る必要がありますが、共同親権にすることに不安がある場合は、適切な対応が必要となりますので、是非一度、法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。