【嫡出推定・否認制度等】民法の一部が改正されます(2024年4月1日施行)
目次
1 女性の再婚禁止期間が廃止されます
女性は前婚の解消等の日から起算して100日を経過した後でなければ再婚することができないと規定されていた民法733条の規定が削除されます。このため、女性も男性と同じく、離婚後すぐに再婚することが可能となります。
2 婚姻の解消等の日から300以内に子が生まれた場合でも、母が再婚した後に生まれた子は、再婚した夫の子と推定されることになります
これまで子どもが無戸籍となる問題の大きな原因の一つとなっていた民法772条の規定(婚姻解消等の日から300日以内に生まれた子は(前)夫の子と推定される。)が改正され、子の出生までに複数の婚姻がある場合は、直近の婚姻における夫の子と推定されることになりました。なお、このとき子が生まれるまでに再婚しない場合は、従前と同じく(前)夫の子と推定されることになります。
3 婚姻前に懐胎した場合でも、婚姻後に子が生まれた場合は、夫の子と推定されることになります
これまでは婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は、夫の子と推定されず(推定されない嫡出子・民法772条)、父の欄を夫以外とする出生届をすることも可能でした。今回の改正では、婚姻前に懐胎した場合や婚姻成立の日から200日以内に生まれた子であっても、婚姻後に子が生まれた場合は、夫の子と推定されることになりました。なお、夫の子でない場合は、嫡出否認の手続きが必要となります。
4 嫡出否認権が、母・子にも認められることになります
これまで嫡出否認権は夫にしか認められておらず(民法774条)、母が嫡出否認をしようとする場合は、親子関係不存在確認や強制認知の手続を取る方法によって事実上救済されてきました。今回の改正では、嫡出否認権が拡大され、母・子にも認められるようになりました。母・子が嫡出否認をする場合は、いずれも父に対して嫡出否認の訴えを提起することになります。
5 嫡出否認の訴えの出訴期間が1年から3年に延長されます
これまで父による嫡出否認の訴えについては、夫が子の出生を知ったときから1年以内に訴訟提起しなければならないとされていました。今回の改正ではこの期間が延長され、3年となりました。この3年の起算点ですが、子・母による嫡出否認の場合は「子の出生時から3年」となり、父による場合は「父が子の出生を知ったときから3年」とされ、母・子と父で起算点が異なります。
6 今回の改正(2024年4月1日施行)で具体的にどう変わる?
・前夫との離婚後、女性はすぐに再婚することができるようになります。
・前夫との離婚時に別の男性との子を妊娠していて、子どもが離婚後300日以内に生まれても、子どもが出生するまでに再婚すれば再婚後の夫の子どもとされます。
・前夫との離婚時に別の男性との子を妊娠していて、子どもが離婚後300日以内に生まれ、再婚もしなかった場合は、子どもは離婚した夫の子と推定されます。これをくつがえすためには、母は離婚した父を相手として嫡出否認の訴えを提起することになります。
・夫は、妻との間に生まれた子が2歳を過ぎ、子どもが自分と全く似ていないことに気づきました。DNA鑑定を行い、その結果、実際に夫と子に血縁関係がないことが分かった場合、子どもが生まれたことを夫が知ってからまだ3年以内なので、夫は嫡出否認の訴えを提起することができます。
・結婚前に妊娠した場合であっても、結婚後に子どもが生まれた場合は、夫の子どもと推定されます。夫の子ではない場合は、嫡出否認の手続きが必要となります。
※嫡出子とは?・・・婚姻中の夫婦の間に生まれた子