離婚時に財産分与をしない方法
目次
1 財産分与の原則ルールと例外
離婚の際には、夫婦が協働して得た財産について、夫婦の一方が他方にあるいは相互に分与するという制度です(民法768条)。そして、この財産分与における清算の割合については、様々な見解があるところですが、共稼ぎの夫婦、妻が専業主婦の夫婦いずれの場合であっても、原則として割合を2分の1とするいわゆる2分の1ルールが実務の扱いとなっております。
財産分与にあたっては2分の1ルールが原則にはなりますが、財産の増加が分与義務者の特別の才能や特有の事情の寄与が著しく大きい場合においては修正されます。裁判例の中には、開業当時はみるべき資産がなかった医師の夫が、次第に盛業になり、高額の資産形成がされた事案において、夫が多額の資産を有するに至ったのは、妻の努力があったこともさることながら、夫の医師ないし病院経営者としての手腕、能力に負うところが大きいものと認められるなどの理由から、財産分与の基準を2分の1とすることは妥当でないと判示したものも見られます(福岡高判昭和44年12月24日判時595号69頁)。
2 財産分与をする必要がない場合
⑴ 財産を夫婦の協働で得たものではないとき
以上のことを前提にすると、まず財産分与の必要がない場合としては、財産を夫婦の協働で得たものではない場合が考えられます。
例えば、婚姻前に取得した財産や、婚姻中に取得した財産であってもそれが夫婦の一方が例えばその親から贈与を受けたものであれば、その財産は夫婦が協働して取得した財産とはいえないため、このような財産は財産分与の対象とはなりません。
⑵ 婚姻の届出前に別段の合意がある場合
夫婦間における財産の帰属は、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産はその特有財産となり、財産分与の対象とはならないですが、夫婦財産契約を締結していれば、夫婦間での財産の帰属は、その契約によることとなります(民法755条、民法758条1項)。そのため、仮にその財産が夫婦が婚姻中に協働して取得した財産であった場合でも、契約によりその扱いを変更することで、財産分与の対象から外すことが可能となります。
もっとも、このような夫婦財産契約は利用されていない状況にあるのが実情です。夫婦財産契約は、婚姻の届出前に行われるものであるところ(民法755条参照)、まさに今から婚姻をするという場面において、夫婦関係解消時における財産処理を容易にするための夫婦財産契約を締結するとは実際のところなかなか考えづらいと思われます。
⑶ 離婚時に財産分与を放棄する旨の合意をする場合
財産分与請求権は、通説は離婚時に抽象的に直ちに発生すると考えられています。
もっとも、離婚時に当事者間で財産分与請求権を行使する者が、その権利行使を行わない旨の合意をすれば、財産分与を行う必要はなくなります。この場合には、あとでその合意の有効性が問題とならないように、その合意内容を公正証書などの形で書面に残し、また無理やり合意させられたなどの話がでないように適切な話合いの下で合意することが必要になってきます。
⑷ 期間が経過した場合
また、財産分与請求には期間制限があり、離婚の時から5年を経過すると、請求はできなくなります(民法768条2項参照)。なお、この規定は令和6年民法改正により、従来の2年間から5年間に変更されたものではありますが、施行日(令和6年5月24日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日)までは従前どおり2年間となります。
3 まとめ
財産分与は、原則として2分の1の割合で行われることになりますが、ここまで述べたような場合には、財産分与を行う必要はありません。
財産分与をしなければならないのか判断に悩まれる場合もあると思われますので、財産分与の際には、弁護士にご相談されることをお勧め致します。