配偶者が経営する会社の株式・資産の財産分与

1 会社の保有する株式・資産について

財産分与は、離婚をしたものの一方が、他方に対して行う財産の分与の請求です(民法768条)。夫婦の協力によって得た財産(共有財産)が財産分与の対象となります。
配偶者が経営する会社は、配偶者がその会社に関与しているとはいえ、法人である会社と配偶者は別人格です。そのため、会社の保有する株式、資産は財産分与の対象とはなり得ないのが原則です。もっとも、以下で述べるとおり、会社の保有する株式、資産についても財産分与の対象とされる可能性はあります。

2 会社の株式が財産分与の対象となる場合

⑴ 会社所有の財産自体が財産分与の対象になる場合について

会社所有の財産が財産分与の対象とならないのは、既に述べたとおりです。もっとも、形式的には会社の保有財産であったとしても、そこに個人の財産が使用されている場合や、会社財産と個人の財産が明確に区別されていない場合などにおいては、実質的にみて夫婦の協力によって得られた財産であるとして財産分与の対象となる可能性があります
裁判例では、会社所有の財産について婚姻後、夫がその個人営業により得た資金を投下して発足させた従前の個人営業の延長であり、夫個人が実質上の管理処分権を有していたことが認められるから、財産分与請求につき判断するに当たっては、夫個人の営業と同視するのが相当であるとしたものがあります。(大阪地判昭和48・1・30判タ302号233頁)。また、自動車販売業を行うための会社は、夫婦が営んできた自動車販売部門を独立させるために設立されたもので、マンション管理業を営むための会社も、夫婦が所有するマンションの管理会社として設立されたものであり、いずれも夫婦を中心とする同族会社で、夫婦両名とも経営に従事していたことに徴すると、会社名義の財産も財産分与の対象として考慮するのが相当であるとしたものもあります(広島高岡山支判平成16・6・18判時1902号61頁)。
このように、実務上は、形式的には第三者たる会社名義の財産であったとしても、実質的にみて夫婦の協力によって得られた財産であるかどうかが検討されています

⑵ 配偶者が保有する配偶者経営の会社株式について

以上とは別で、配偶者が同人の経営する会社株式を保有している場合には、それは夫婦の共有財産にあたるとして、財産分与の対象となることがあります
なお、会社資産は、会社が夫婦とは異なる別人格である以上、財産分与の対象とならないのは既に述べたとおりですが、会社資産の評価が株式価値の評価に影響してきます。

3 まとめ

配偶者が経営する会社の株式・資産は、それが会社名義のものである限り、配偶者と別人格である以上、財産分与の対象とはならないのが原則です。もっとも、裁判例にあるとおり、実質的にみて夫婦の協力によって得られた財産であると評価されれば、財産分与の対象となる可能性があります。配偶者が経営する会社の株式・資産について、財産分与でお悩みの方は、この分野に詳しい弁護士にご相談ください。

【参考文献】
ケーススタディ財産分与の実務 勝木萌・竹下龍之介・中村啓乃・堀尾雅光・宮崎晃(日本加除出版 2021年3月)

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