記者の離婚問題
記者に特有の離婚問題
1.特徴
夫婦の一方又は双方が記者の場合、離婚にあたり考慮しなければならない特有の問題があります。
ただ、一言で記者といっても、放送局、新聞社、出版社、フリー等、活躍の場は多岐にわたります。なお、大手放送局や新聞社・出版社に勤務されている場合、平均年収が高い傾向にあり、1000万円を超えることも珍しくありません。
記者のなかには、収入が安定しているうえに、平均年収や退職金が高い方も多くいらっしゃいますので、慰謝料や財産分与などが高額化したり,財産分与が複雑化して紛争となりやすい傾向にあります。
ちなみに、記者の平均年収は約850万円というデータもあるようです。
高収入で魅力的に見える仕事ではありますが、取材・原稿におわれる等、その労働環境は多忙で過酷です。ただ、自分が取材し書いた原稿が新聞や雑誌に載り、反響を得るといった記者ならではの仕事には、やりがいを感じる方も多いでしょう。
2.特に気を付ける点
①財産分与
一般的な夫婦の離婚の場合、財産分与の割合は基本的には2分の1ずつなのですが、夫婦の一方が記者で高収入を得ている場合は、その割合が修正されることがあります。
高収入の医師の事案ですが、例えば、福岡高裁昭和44年12月24日判決の事案では、「夫が医者として病院を開業し、1969年当時の年収が1億円を超え、かつ1億円を超える資産を保有している事案で、2分の1を基準とすることは妥当性を欠く」として、妻に2000万円の財産分与しか認めませんでした。
②退職金
将来の退職金が財産分与の対象となるか問題となりますが、近い将来に受領できる蓋然性がある場合に、将来の退職金を財産分与の対象となしうることについては、判例が確立しています。
問題は、その評価方法、支払時期、何年先の退職であれば認められるのかということですが、大手放送局や新聞社・出版社に勤務されている場合、退職金を受領する蓋然性が高いので、退職が10年以上先であっても、財産分与の対象となる可能性があります。
夫が勤続年数27年、9年後に定年退職する国家公務員の事案で、「国家公務員退職手当法に基づく退職手当の支給を受けたとき、550万円を支払え」と夫に命じた判例があります(名古屋高裁平成12年12月20日判決)。
このように夫婦の一方又は双方が記者の場合、離婚にあたり考慮しなければならない特有の問題があります。したがって、離婚問題を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。