僧侶の離婚問題
1.特徴
夫婦の一方又は双方が僧侶の場合、離婚にあたり考慮しなければならない特有の問題があります。
僧侶のほとんどが寺院に所属することになり、主な収入としては葬儀や法事での収入があるようです。また、僧侶の年収は平均600万円から700万円というデータもあるようです。多い人になると月収で100万円を超える方もおられるようです。
2.特に気を付ける点
①宗教法人
夫婦の一方が宗教法人の代表役員をしている場合、法人と代表役員個人とは別個ですので、法人が有している財産は財産分与の対象とはなりません。
ただし、代表役員個人が、所有する不動産や金銭を宗教法人に貸し付けていたりすることがあります。この場合、不動産や貸付金は代表役員個人の財産となりますので、財産分与の対象になる余地があります。
②退職金
また、僧侶の場合、退職金に相当するものがないと誤解されている方がいるかもしれません。しかしながら、宗教法人を経営している場合、終身保険に加入している場合があります。そして、この保険に加入している場合、僧侶が引退する際に、その保険の解約返戻金を退職金に相当するものとして受け取る場合もあります。
また、金銭に余裕のある寺院などでは、住職の在職時から退職給与引当金を積んでおき、退職時に退職金を支給する制度を採用しているところもあります。
さらに、そのような制度を採用していなくても、次に住職となる人が私的に金銭を用立てて、これを前住職の退職金に当てるというような場合もあるようです。(法律上は、新住職が寺院に金銭を貸し付ける形などを取ったりします。)。この次に住職となる人が、前住職を退任させるために金員を支払うという点を強調し、「寺院を買う」と表現されることもあるようです。
このように、僧侶も一般の退職金に相当するような金銭を受け取る場合があります。このような場合も、財産分与の対象となる可能性がありますので、忘れないようにしなければなりません。
③配偶者を雇用している場合
宗教法人を経営されている方のなかには、配偶者を責任役員や監事にしているケースも多いのではないでしょうか。その場合、離婚を理由に責任役員や監事を退任させることはできません。
もっとも、配偶者の側としても、離婚後も責任役員や監事として残っていると、万一法人に何か問題が起こった場合に損害賠償責任を負わされてしまう可能性があることから、離婚後は退任したいと考えるかもしれません。
このため、離婚協議の際に、配偶者から退任届を提出してもらうなどの対応を取ると良いでしょう。
また、配偶者を従業員として雇用している場合も、同様に、離婚を理由として解雇することはできません。ただ、従業員である配偶者の側としても、引き続き雇用されることを望まないことも多いかもしれません。このため、この場合も、配偶者から退職届を出してもらうなどし、十分に話し合いをした上で円満に退職してもらうような措置を取ると良いでしょう。
このように夫婦の一方が僧侶の場合、離婚にあたり考慮しなければならない特有の問題があります。
したがって、離婚問題を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。