「モラハラ夫との離婚」
目次
1 はじめに
離婚の原因は様々ですが、夫のモラハラが原因で離婚を決意される方は少なくありません。
以下では、いわゆるモラハラ夫との離婚について、解説していきます。
2 モラハラを原因とする離婚の可否
(1)モラハラとは
法律上の明確な定義があるわけではないものの、一般に、相手の人格を攻撃する、無視するといった言動によって相手を精神的に追い詰める行為は、広くモラハラ(モラルハラスメント)と呼ばれます。
(2)離婚事由
夫が離婚に応ずる場合には、未成年の子の親権者さえ定めれば、他に条件等を定めずとも、離婚届けを出すことで離婚できます(協議離婚といいます)。
もっとも、モラハラ夫が離婚に応じない場合は少なくありません。この場合には法律上の離婚事由(仮に裁判になった場合に、裁判所が離婚を認める事由)の有無を念頭に置きながら対応を考えていく必要があります。
ア 典型的な離婚事由
夫が不貞をしており、かつその証拠も揃っているというのが、法律上の離婚事由があるといえる典型的な場合です。この場合、最終的には裁判により離婚できます。
イ モラハラを原因とする場合
他方で、夫のモラハラは、妻にとって大きな負担ではあるものの、法律上の離婚事由とはされていないため、他に典型的な離婚事由がなければ、そのままでは裁判で離婚が認められる可能性は低いと言わざるを得ません。
もっとも、民法上、典型的な離婚事由がないときでも、婚姻関係が実質的に破綻しているときは離婚が認められるとされ(「破綻主義」といいます)、夫婦が長期にわたり別居しているような場合には、既に婚姻関係が破綻しているものとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。婚姻関係が破綻していると認められるために必要な別居期間は、具体的な状況によって異なりますが、妻が有責でないとき(妻に不貞等がないとき)は、概ね5年程度とされています。
ウ まとめ
このように、夫との別居は、更なるモラハラの被害を防ぐのみならず、法律上の離婚事由を作り出すという意味を持ちうるのです。
3 別居・生活費
(1)別居の方法・準備
別居するにあたり、事前にその旨を夫に告げる必要はありませんし、むしろ夫が激高したり引き止めたりすることが想定される場合には、告げるべきではありません。
(2)生活費-婚姻費用
夫との別居後、離婚成立までの間の妻(及び妻が監護する子)の生活費については、「婚姻費用」として、一定の範囲で夫に分担を求めることができます。
裁判所を利用した手続(後述の調停や審判)によって婚姻費用の金額を決める場合には、夫婦双方の収入や子の年齢・人数等に応じて、算定表(裁判所が公表しています)等の客観的基準に従って決められます。
4 離婚や生活費について話し合うための手続
長年モラハラをしてきた相手と交渉しようとしても、話が進まないケースは少なくありません。この場合、裁判所を利用して話し合いを進めることが考えられます。
(1)調停での話合い
調停は、裁判所を介在させるかたちで当事者が話し合う手続です。あくまでも話合いですから、訴訟や審判とは異なり、裁判所が一定の結論を出してくれるわけではありません。もっとも、調停委員と呼ばれる人(男女1組の2名)を通じて話し合いをします(当事者が調停室に交代で入り、調停委員と話します)ので、直接夫と話をする必要はありません。
(2)話合いがまとまらないとき
調停で話し合いがまとまらなければ、訴訟や審判と呼ばれる手続により、問題となる事項について裁判所に判断してもらうことになります。
5 最後に
離婚の手続を有利に進めるうえでは、法的知見もふまえて、なるべく早期に準備を始める必要があります。
もし、「モラハラ夫との離婚を考えているが、どのような準備をすればよいのか分からない」といったことでお困りなら、離婚に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。