モラハラ夫が一人になるとどうなるのか弁護士が解説
目次
第1 初めに
昨今、モラルハラスメント、通称「モラハラ」という言葉が世の中に浸透し、離婚に関する相談の中でも、夫のモラハラがひどいため離婚したいという内容のご相談を多く受けるようになりました。
しかし、仮に離婚を成立させることができたとしても、それでモラハラ夫との関係を完全に断ち切れるかというとそうとは言い切れません。
今回は、離婚後一人になったモラハラ夫がとる可能性のある行動をご紹介した上で、それに対する対処法や離婚する際の注意点を解説していきます。
第2 考えられるモラハラ夫の行動
1 メンタルに問題を抱える
モラハラ夫は、自尊心が低く、人間関係に優劣をつける傾向にあります。そのため、会社では上司に対して媚びへつらいますが、家庭内では、妻を下位の者として位置付けて、高圧的な態度をとることで、自身の自尊心を保っているケースが多いです。
そのため、妻と離婚してしまった場合、優位に振る舞える相手がいなくなり、自分自身の地位が相対的に下がってしまうため、夫の自尊心が下がってしまいます。その結果、メンタルに問題を抱えて、うつ病を発症してしまう方もいます。
また、モラハラ夫は、世間体や周りからの評価を気にするため、周囲にも相談することができず、徐々に周囲から孤立してしまうこともあります。
2 養育費が滞る
モラハラ夫は、上記のとおり、離婚後にメンタルに問題を抱えることが多いため、社会から孤立して養育費の支払いが滞るケースや、自暴自棄な生活を送って経済的に困窮してしまい、養育費を支払えなくなるケースがあります。
その他にも、元妻や子供への嫌がらせとして、養育費の支払いをわざと怠る可能性もあります。このような場合に備えて、第4で記載するとおり、養育費の支払いについて、公正証書を作成しておくことが重要です。
3 執拗に連絡してくる
モラハラ夫は、モラハラ行為によって、自分自身の感情をコントロールしているため、離婚後も元妻に執着するケースが多いです。そのため、離婚後に、妻のおかげで自尊心や精神状態を保てていたことに気付き、「以前の自分とは変わった」「反省している」などと謝罪の連絡をすることで、復縁を試みようとする方がいます。もっとも、モラハラ夫は、復縁してしばらくすると、今までどおり、モラハラ行為を繰り返すケースが多いため、第3で記載するとおり、このような連絡は、全て無視することが最善の対処法であるといえます。
その他にも、妻から別れを切り出されたという現実を受け入れられず、自分自身を正当化するためや、妻への嫌がらせ目的で、しきりに連絡してくるケースもあります。
4 子供を利用する
上記のとおり、モラハラ夫は、元妻に執拗に連絡する傾向にありますが、元妻がこれを無視していると、子供を利用して元妻との繋がりを持とうとするケースもあります。
元妻に隠れて、子供に連絡を取ることで、元妻の近況だけでなく、居住している場所や、就職先などの情報を得ようとする場合もあります。このような場合、モラハラ夫は、元妻の自宅を訪問したり、職場付近で待ち伏せしたりするなど、ストーカー行為へと発展することもあるため、第3で記載するとおり、警察にご相談いただいた方が良いでしょう。
5 新しいパートナーを見つけてモラハラをする
モラハラ夫は、外面がよく、周囲からの評判は優れているため、新しいパートナーを見つけることも難しくはありません。
この場合、モラハラの矛先は、その新しいパートナーに向き、新たな被害者が生まれるおそれがある一方で、元妻や子供に対する執着はなくなる傾向にあります。
第3 対処法
では、このようなモラハラ夫の行動に対しては、どのように対処すべきなのでしょうか。
1 無視する
やはり、まずはモラハラ夫から連絡が来たとしても、無視して一切答えないというのが鉄則です。
毎日のようにメールやラインが来るような場合、軽い気持ちで反応してしまいたくなるかもしれません。しかし、付け入る隙を与えてはいけません。たとえ軽い気持ちだったとしても、モラハラ夫からすれば、反応が返ってきたということから復縁のチャンスがあると勘違いして、さらに連絡をしてくるおそれがあります。
どれだけ連絡が来ても相手にしない、もしくは、メールアドレスを変更したり、ラインをブロックしたりするなどして連絡が届かないようにするのも一つの手でしょう。
2 警察に相談する
モラハラ夫が、メールやライン等の連絡だけでなく、待ち伏せするなどして物理的な接触を図ってきた場合、元妻が一人で対処するというのは難しいと思われます。
この場合には、すぐに警察に相談するのが望ましいでしょう。ストーカー被害が社会問題となっている昨今においては、警察も相談を親身に聞いて適切な対策を助言してくれることが多くなっているため、ご安心ください。
また、相談内容を聞いた警察が、このままでは元妻の身に危険が及ぶと判断すれば、ストーカー行為についての「禁止命令」という措置がとられることもあり、これに違反してストーカー行為を続けた場合には刑事罰が課される仕組みとなっています。
第4 離婚する際の注意点
1 離婚条件を強制執行が可能な形にしておく
離婚する際には、養育費や財産分与等の離婚条件を決める必要があります。
離婚条件について、口頭で合意することも可能ですが、モラハラ夫がその合意通りに支払ってくれない場合、裁判を起こして、その合意の存在や合意に違反していることを立証しなければなりません。
一方で、離婚条件を強制執行受諾文言付きの公正証書の形で残す、もしくは、調停で離婚を成立させておけば、支払が滞った段階で、裁判手続を経ずとも強制執行をかけて、滞納分を回収することができます。
離婚後、モラハラ夫との関わりを最小限にとどめるためにも、離婚の仕方を工夫する必要があるでしょう。
2 証拠を残しておく
モラハラが原因で離婚しようとする際、先に別居してから離婚協議に進むケースが多いと思われます。このとき、モラハラ夫は、別居した段階で、妻の居場所を突き止めようと、しつこく連絡をしたり、待ち伏せをしたりすることがあります。
このようなストーカー行為が始まった場合、すぐに警察に相談する必要があるところ、警察が早急に動けるよう、電話やメールの履歴等の証拠を残しておくということを心がけましょう。
第5 終わりに
今回は、モラハラ夫が嫌がらせ行為をしてきた場合の対処法を解説しました。
離婚条件を話し合う場合、離婚後嫌がらせをしてくるモラハラ夫に対処する場合のいずれにおいても、一人で進めるのは現実的に難しいと思われます。
そこで、モラハラ夫との離婚にお悩みの方は、この分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。