自粛,在宅勤務により,モラハラやDVに悩んでいる方へ
目次
1 「コロナ離婚」「コロナDV」
現在,世界的に新型コロナウイルス感染症が蔓延しており,日本では,2020年4月7日に7都府県に対して,16日に全都道府県に対して,緊急事態宣言が発令される事態にまで至りました。
企業は休業や在宅勤務などの対応を迫られており,個人レベルでも「Stay Home」という言葉のもと外出自粛が要請されています。これにより必然的に家族が家で一緒にいる時間が増えましたが,それに伴って世界的にDV被害やモラハラ被害が増加しており,「コロナ離婚」「コロナDV」という造語まで出現するようになりました。
以下では,モラハラやDVにあった場合どうするべきか,離婚を決意した場合にするべきことは何かについて解説します。
2 まずは話し合いを
まだ夫婦として継続していける可能性がある場合には,一時の感情にまかせず,しっかり話し合いが必要です。一時的な感情に任せて離婚してしまうと,あとから後悔してしまう可能性がありますので,まずは一度話し合ってみてください。
ただし,特にDVは生命の危険にもつながる行為ですから,無理は禁物です。
3 離婚を決意された方へ
⑴ まずは別居を
DVやモラハラの被害がひどく,離婚を決意された場合は,まずはすぐに別居をすることをお勧めします。同居したまま,離婚の話を切り出すと相手方が激高し,モラハラやDVの被害が悪化する可能性があるからです。また,別居は夫婦関係が破綻しているか否かを判断するうえでの一つの基準となるからです。
⑵ 離婚の手続き
別居後は,夫婦間での話し合いによる解決は難しいでしょうから,裁判所での手続きを利用することをお勧めします
裁判所での手続きは,離婚調停,離婚訴訟の2つの段階があります。
離婚調停は調停委員が間に入り,話し合いにより解決するもので,両者の合意が形成された場合にのみ離婚が成立します。
他方,離婚訴訟は,裁判所が強制的に離婚させるか否かを判断する場であり,民法770条1項に定められた次の5つの条件のいずれかに該当する場合にのみ離婚を命ずる判決が下されます。なお,日本では調停前置主義がとられていて,いきなり裁判を申し立てることはできません。
① 不貞行為
② 悪意の遺棄
③ 3年以上の生死不明
④ 回復の見込みがない強度の精神病
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
⑶ DVやモラハラによる離婚の際に気を付けることは
DVやモラハラの場合には,⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかが問題となります。⑤にあたるといえるためには,モラハラやDVが他の4つの条件と同程度に重大なものであることが必要とされています。そして,重大なものといえるかは,DVやモラハラの程度・頻度,悪質性などが考慮されます。
調停段階では,上記の条件のどれかに該当していないといけないということはありません。互いの合意さえあれば離婚できます。しかし,DVやモラハラの加害者側は離婚を渋るケースが多々あるので,離婚事由があるに越したことはありません。
ですので,離婚を決意した方に,別居前に「証拠の確保」をしておくことをおすすめします。DVやモラハラを理由に離婚をする場合には,次のものが重要な証拠となります。
① DVやモラハラ行為の録音・録画
② DVやモラハラ行為がわかるLINEなど
③ DV被害を受けた際の怪我の写真
④ DV被害の直後に取得した診断書 など
ただし,DV被害がひどく,生命・身体への危険を感じる状況のときには,証拠収集よりも自分の身を優先し,すぐに別居をするようにしてください。
⑷ 弁護士に相談を
DV被害者の多くは,相手に対して恐怖心があるため,直接離婚の協議をすることが難しい状況です。また,相手方が感情的になり,冷静に話し合うことが困難なことが多いです。そのため,DVやモラハラ事案は特に弁護士に依頼されることをお勧めします。弁護士であれば,話し合いの段階から代理で相手方と交渉することができ,また調停や訴訟においても有利に進めることができます。