発達障害(ADHD、ASD)の配偶者との離婚
1 発達障害について
あなた自身が配偶者とうまくコミュニケーションが取れないと感じたことはないでしょうか。全く話が通じない、心が通じ合わないと感じることはないでしょうか。ただ人付き合いやコミュニケーションが苦手なだけだろうと思われるかもしれませんが、その中には発達障害をかかえている人が一定数含まれています。
発達障害者支援法では、発達障害は、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発言するもの」とされています。発達障害には、このようないくつかの種類がありますが、多くの場合、他人の気持ちの理解力・共感力に問題を抱えています。他人に無頓着な夫又は妻と生活していると夫婦関係で軋轢を生じ、最終的に離婚に至るというのはまま見られる事例です。
ASDの傾向がある配偶者を持つ方の中には、いわゆるカサンドラ症候群と呼ばれる症状に陥り、心身に様々な症状が出たり、抑うつ状態になる方も珍しくありません。このような状態となれば、配偶者と婚姻関係を続けることは難しく、改善が望めない場合も多いため、離婚が選択肢の一つとなってきます。
発達障害の中でもASD(アスペルガー症候群)、注意欠陥多動性障害(ADHD)という名称は皆さんも一度は聞いたことがあるかと思います。あなたの配偶者に以下のような症状があれば、アスペルガー症候群やADHDを疑ってみるべきかもしれません。
2 ADD(アスペルガー症候群)
ASD(アスペルガー症候群)には、①社会的コミュニケーション障害、②興味・活動の偏り、という特徴がみられます。
アスペルガー症候群の方は、いわゆる場の空気を読むということができず、うまく周囲に溶け込むことができません。他人の気持ちを理解することが難しいため、思ったことをそのまま言葉にしてしまい、対人関係に軋轢を生じます(①社会的コミュニケーション障害)。
また、特定のものに興味を持ち、過剰に熱中する傾向があります。興味のある分野については、驚異的な能力を発揮する場合もありますが、異常なほどのこだわりを見せるため、他人と共有の話題を共有することができないという問題をかかえます(②興味・活動の偏り)。
高学歴やエリートと呼ばれる職業についている方、一流企業に勤務されている方にも、ASDの傾向がある方がいらっしゃいます。
3 ADHD
ADHDには、①不注意、②多動性、③衝動性という3つの特徴が見られます。
注意力が散漫であり色々なものに意識が向いてしまうため、宿題の提出期限を守れない、仕事の納期を守れない、忘れ物が多いといった社会生活上の問題を生じます(①不注意)。
好きでないものに対し全く関心を示さず集中することができないため、貧乏ゆすりをする等日頃から落ち着きがなく、じっとしていることが出来ません(②多様性)。
思いついたことをよく考えずに口に出したり、衝動的に行動する等、自らの欲求をコントロールすることが出来ません。思い通りにならないと、感情を抑えられず不機嫌になり、大声で怒鳴る、物にあたるといった行動をとります(③衝動性)。
4 発達障害の配偶者との離婚
発達障害の配偶者がいる場合、相手に態度の改善を望んでも、発達障害の特性から改善が見込まれない場合も多いようです。その場合、こちらが発達障害の配偶者の言動に耐えて婚姻生活を続けていくか、離婚するかを選択しなければなりません。
では、配偶者が発達障害であることを理由に、離婚することが認められるでしょうか。
協議離婚に応じてもらえる場合はもちろん離婚することができますが、配偶者が離婚を拒否した場合は、裁判所で離婚を認めてもらう必要があります。
現在の民法には、裁判で離婚が認められる事由が法律で定められています(民法770条)。例えば、配偶者に不貞行為があったときや(同1号)、配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき(同4号)などです。発達障害については、「強度の精神病」などでもなく、法律で定められている離婚事由には当たりません。このため、発達障害であることだけを理由に離婚することは出来ません。
しかし、発達障害を抱えており日頃から暴力を振るっている等の事情がある場合には「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚が認められる可能性があります。
もっとも、発達障害傾向のある配偶者との離婚の話し合いは難しいのが実際です。離婚の本筋とは関係のない些細な点にこだわって話が先に進まなかったり、金銭的な計算が非常に細かかったり、感情論的な話(離婚したい理由や、子どものために譲歩して欲しい)などには一切理解を示さないなど、感覚的には通常の離婚案件の1.5倍以上の時間がかかるような印象です。発達障害を抱えた配偶者では、離婚をしたいあなたの気持ちに理解を示すことはありません。
発達障害傾向のある配偶者との離婚を進める際には、離婚調停を申立て、裁判所という場所で話し合いを進めるのが比較的スムーズであるという印象です。自分の意見が絶対に正しいと信じる配偶者でも、裁判官の意見には従うという態度を取る場面も多々見られます。
スムーズに離婚して新たな生活を始めるには、法的知識を有した専門家に相談されるのが近道です。離婚でお悩みの方は、是非、一度法律事務所瀬合パートナーズにご相談ください。