モラハラ行為に対して慰謝料は請求できる?
第1 はじめに
「モラハラ」という言葉を日常的に耳にすることは多いのではないでしょうか。モラハラとは、一般にモラルハラスメントの略称として使われており、肉体的な暴力はないものの、言葉や態度によって相手を否定するなどして、精神的に追いつめる行為を指して用いられます。
モラハラ行為に日常的にさらされていることに悩み、離婚することを決意したという人は、近年とても多くなってきています。こうした相談者の方からよく受ける質問の一つとして、「モラハラ行為を受けてきたことを理由に、相手に対して慰謝料の請求をすることはできますか?」というものがあります。以下では、この質問について順を追って説明をしていきたいと思います。
第2 モラハラと慰謝料
1 慰謝料として認められる金額の相場
モラハラ行為を理由に慰謝料が認められるケースでは、数十万円から百数十万円の慰謝料となることが多いのが現状です。もちろんこれ以上の慰謝料が認められるケースも考えられるところですが、不貞行為があったことを理由に慰謝料請求を行う場合と比べると、まだまだ請求が認められづらい印象があります。
モラハラという言葉の定義は、上に述べたとおりですが、実際にモラハラが疑われる行為があったとしても、その程度には非常に大きな差があります。例えば、相手の言葉や態度により、日常的にイヤだなという気持ちを抱えて生活をしていたという方もいれば、相手からの暴言が酷く、その回数も多かったことから、体調を崩してしまい心療内科に通院しているという方もいらっしゃいます。慰謝料は、請求者がどの程度のモラハラを受けていたのかによってその金額が大きく上下しますので、モラハラ行為の存在が認められたとしても、必ずしも定額で数百万円といった支払いが受けられるわけではないことに注意が必要です。
2 モラハラの証明方法
それでは、モラハラ行為に対して慰謝料を請求する場合には、どのような証拠を集めておけば良いのでしょうか?
もちろん、請求者が、相手の過去の言動を理由に慰謝料請求を行い、請求された相手も、素直に過去の言動を省みて、慰謝料を支払うと約束してくれるのであれば、証拠の収集は特に大きな問題とはならないでしょう。しかしながら、モラハラを行っている相手には、ほとんどの場合、自身の言動に非があるという意識がなく、本人のプライドが高いことも少なくないため、慰謝料など支払わないという対応に終始されることも珍しくありません。
そのため、モラハラを理由に離婚を考えているというケースでは、裁判になったとしても通用するような証拠集めが重要となってきます。具体的には、相手の言動を日記などにメモしておく、スマホやボイスレコーダーなどで相手の発言を記録しておくといった対応が考えられます。相手からのモラハラが酷かったという主張には、どうしても個人の主観が入り込んでしまいますので、実際にどのような言動があったのかを客観的に示すことのできる資料があれば、裁判において非常に有用となります。また、相手のモラハラにより、心療内科等への通院を余儀なくされたというような場合には、医師の診断書を証拠提出することも検討できるでしょう。
第3 おわりに
ここまでモラハラ行為に対して慰謝料請求ができるのかについて説明してきました。事案によって大きく結論が左右され得る問題ですので、おひとりで悩みを抱え込まずに、ぜひ専門家へ法的なアドバイスを求めて欲しいと思います。モラハラについて慰謝料の請求ができるのだろうかとお考えの方の中には、離婚も視野に入れて今後どのように行動していけばよいかお悩みの方も多いと思いますので、そうしたお悩みをお持ちの方は、慰謝料の請求を含む今後の方針全般について、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。