親権を希望する親の収入が少ないとき
親権の判断枠組み
夫婦が離婚する場合には、その一方を親権者と定めなければなりません。協議の上でどちらか一方を親権者とすることは当然可能です。もっとも、いずれも自分こそ親権者にふさわしいと主張して譲らないような場合には、子の利益の観点から、どちらがより親権者としての適格性を有しているかという基準で判断されることになります。
具体的には、①これまでの子の監護状況、②現在の子の監護状況、③父母の監護能力(父母の健康状態、経済状況、居住環境・教育環境の整備状況、子への監護意欲など)、④子の年齢、⑤これまでの環境への適応状況、⑥環境変化に対する適応能力、⑦子の意思など、父母側の事情と子の側の事情を総合的に考慮して、いずれが適格性を有するかという点から判断がなされます。
親権を希望する親の収入が少ないとき
親権の判断枠組みで記載させていただきましたとおり、親権は単に収入に着目して、収入の多い方が親権者となるというような考え方は基本的にとられていません。これまで育児にまったく関与してこなかった上、仮に親権者となったとしても、とても子を育てられるような環境にない親が、収入が多いという一事情をもって親権者となっても子の利益にならないことは明らかです。
確かに、およそ子の養育が不可能なほどに経済状況が悪ければ、親権の判断に悪影響がないとはいえません。しかし、夫婦間の収入差については、相手方から婚姻費用や養育費の支払いを適切に受けることによって、ある程度改善することができます。
婚姻費用は離婚するまでもらえる生活費のことで、養育費は離婚後に子の養育のために支払われる費用のことです。いずれも、双方の収入にしたがって計算がされますので、一方の収入の方が他方の収入と比較してかなり高かったとしても、双方の収入に応じた婚姻費用及び養育費の支払いを受けることで、ある程度経済的格差を埋めることが可能です。
また、児童手当などの公的扶助を受けることも検討してみて下さい。児童手当の場合、現在毎年6月、10月、2月の年3回、子一人あたり月額5000円から1万5000円の給付が受けられます。児童手当は子を監護している人が受け取るべき給付金ですので、子を監護していない人がこれを受け取っている場合には、児童手当分の支払いを相手方に求めたり、児童手当の振込先変更の手続きをとるなどの検討する必要があります。
まとめ
親権を希望する側の収入が低かったとしても、ただちに親権を取れなくなるわけでは決してありません。
適切に婚姻費用や養育費の支払いを受け取りながら、利用できる公的扶助をうまく活用して子を育てる経済状況を整えることで、親権を得られる可能性は高まっていくと考えられます。
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