共同親権について
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共同親権を定める改正法が施行されます
当事者間の合意や裁判所の判断によって、離婚後も父母の双方が親権者となること(共同親権)を認める民法の改正案が早ければ2026年に施行されます。
これまでの民法では、婚姻中は父母が共同親権を行使するものの、離婚後は父母の一方を親権者と定めることになっており、単独親権となりました。しかしながら、今回の改正法により、離婚後も共同親権とすることが可能になります。
以下では、導入が見込まれている離婚後の共同親権について解説します(当記事は、2025年7月時点で作成したものとなります)。
離婚後に共同親権となる場合
当事者間の協議による合意
改正法では「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める」旨を規定されており、父母が協議離婚をする際に、父母の協議により共同親権か単独親権かを選択することができるようになりました。
協議が整わないときは裁判所の判断
改正法では「協議が整わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をする。」旨が規定されており、協議が整わないときは、家庭裁判所が共同親権か単独親権にするか審判により決めます。
また、裁判上の離婚の場合も、裁判所は父母の「双方又は一方」を親権者として定めることとされています。
親権者が決まっていなくても離婚ができるようになる
これまでは未成年の子の親権者を定めなければ離婚をすることができませんでした。
しかしながら、今回の改正法では、親権者の定めがなされていなくとも「親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされている」ときは離婚の届出を受理できることとされました。
共同親権が原則ではない
改正法では「裁判所は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するにあたっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。」と規定されています。
共同親権と単独親権のいずれかを原則とする旨は規定されておらず、裁判所の運用に委ねていると考えられます。
家庭裁判所が判断する際の考慮要素
審判や訴訟の場合、家庭裁判所はどのような場合に共同親権とし、どのような場合に単独親権と定めるのでしょうか。この点について定めた改正民法819条7項によれば、家庭裁判所は、「子の利益のため」、①父母と子との関係、②父と母の関係、③その他一切の事情を考慮して裁量的に判断するとされています。
このため、家庭裁判所は、父母が離婚後も子の養育について協力できるような場合は、共同親権と定める場合があると思われます。
共同親権が許されない場合
もっとも、改正法は一定の事由があれば、必ず単独親権にしなければならないことを定めています(改正民法819条7っ港後段)。それは次のような場合です。
① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
② 父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
そして、②の「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」とは、父母の一方が他方から暴力や心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあるとき等とされています。
上記①②の場合は、家庭裁判所は必ず単独親権と定めなければなりません。
父母の一方が共同親権に反対している場合は
父母の一方が共同親権とすることを反対している場合に、家庭裁判所が父母を共同親権者と定めることはあるのでしょうか。
この点、父母の一方が共同親権に反対しているとしても、家庭裁判所が①父母と子の関係や②父母間の関係、その他一切の事情を考慮して「子の利益のため」と判断した場合は、家庭裁判所が共同親権を選択する可能性はあります(改正民法819条7項)。
単独親権となっているのに、後日共同親権に変更されるのか
改正法では「子の利益のために必要と認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更できる」と定めています(改正民法819条6項)。このため、父母の一方からの請求により、家庭裁判所の判断で単独親権から共同親権へ変更することも可能とされています。
裁判所に対する請求に期間制限等はなく、既に婚姻関係を解消しているか否かといった事情にかかわらず、未成年の子がいる当事者間では共同親権への変更が可能となってきます。
そして、「子の利益のために必要」といえるかについては、①当該協議の経過、②その後の事情の変更、③その他の事情を考慮するものとされています。
また、「協議の経過」については「父母の一方から他方への暴力等の有無、調停等の利用の有無、公正証書の作成の有無その他の事情」を勘案することとされています。このため、協議離婚の際に、外形的には父母が合意をして親権者を定めたとしても、暴力や圧力によって合意がなされたような事情がある場合には、家庭裁判所はこれらの事情を考慮して、合意よって定めた親権者を変更することができることになります。
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