配偶者が取得した交通事故による損害保険金は、財産分与の対象となりますか?(財産分与)
質問
配偶者が取得した交通事故による損害保険金は、財産分与の対象となりますか?
回答
1.損害保険金は、①治療費・通院交通費等の積極的損害、②休業損害・後遺障害による逸失利益の消極的損害、③精神的苦痛による損害としての慰謝料に分けられます。
このうち、③の慰謝料は、受傷者の精神的苦痛を慰謝するためのものですから、受傷者の特有財産です。
2.そこで、残りの①と②について、財産分与の対象となるか否かは、支給された保険金の損害項目ごとに個別に検討することが必要です。
まず、①の治療費ですが、通常は保険会社から直接医療機関へ支払われますので特に問題となりませんが、被害者が自分で医療機関へ支払った際に問題となります。その場合、一方の特有財産から医療機関へ支払われれば、その分の保険金は一方の特有財産となります。
これに対し、夫婦の共同財産から医療機関へ支払われれば、その分の保険金は夫婦の共有財産と考えられます。通院交通費等の治療費以外の積極的損害も同じ考え方ができると考えられます。
3.次に、②の消極的損害である休業損害と後遺障害による逸失利益ですが、事故から症状固定時又は治癒時までは休業損害の問題であり、症状固定後は後遺障害による逸失利益の問題とされています。
そこで、これらに対して、他方配偶者の協力行為が認められる限り、夫婦の共有財産となり、財産分与の対象となると考えられます。将来の得べかりし利益である逸失利益は、毎月発生する収入を便宜上一括払いとするものです。
したがいまして、離婚前の収入相当分については、他方配偶者の協力行為が反映しておりますので、財産分与の対象となりますが、離婚後の収入相当分については、他方配偶者の協力行為が反映していませんので、財産分与の対象とはならないものと考えられます。