養育費の相場はどのくらいですか?
質問 養育費の相場はどのくらいですか?
回答 養育費は、原則として、両親の直近の収入を基準にして計算されます。そのため、決まった相場があるわけではありません。
目次
1 養育費の計算方法について
⑴ 養育費とは
子のある夫婦が離婚した場合、夫婦のいずれか一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。離婚後は、親権者となった親が子どもを監護養育することになりますが、この監護養育に要する費用のことを一般的に「養育費」と呼んでいます。親権者とならなかった親も、子どもにとっては親であることに変わりはありませんので、養育費を負担すべき義務を負うところです。
⑵ 養育費の計算方法
養育費は、直近の夫婦の額面収入をもとに計算されることになります。養育費の計算にあたっては、様々な要素が考慮されますが、おおまかな養育費を知るためには、「標準算定表」と呼ばれる養育費の表を確認するのが有益です。
参照URL:https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
標準算定表は主に、
・子どもの人数
・子どもの年齢(15歳以上か未満か)
・夫婦の収入額
・所得の区分(給与所得か事業所得か)
によって金額が増減します。養育費の表は、子どもの人数と年齢によって参照するべき表が変わるので注意が必要です(例えば、子どもが2人いて、1人が15歳以上もう1人が15歳未満のケースの養育費を知りたい場合は、(表4)を確認することになります)。また、養育費と婚姻費用に関する表が一緒に掲載されていますので、養育費の表を参照するようにしましょう。
標準算定表の縦軸には「義務者の年収」が、横軸には「権利者の年収」が記載されています。「義務者」は養育費の支払義務を負う者を指し、反対に「権利者」は養育費の支払いを受ける者を指します。
一例として、夫の収入が600万円、妻の収入が200万円(いずれも給与所得)であり、15歳以上の子ども1人と妻が生活をしている場合を想定すると、参照するべき表は(表2)になります。(表2)の中で、それぞれの収入を前提とすると、だいたい6~8万円の帯の中ほど、すなわち約7万円が養育費の目安となることが分かります。
なお、標準算定表は、あくまで子どもが公立の学校に進学することを前提としています。そのため、事案によっては、算定表上は考慮されていない私立学校への進学にあたって必要となる費用を加味した養育費の支払いを求めることが可能です。
2 養育費の取り決めができない場合
⑴ 調停を申し立てる
夫婦で養育費について話合いを行い、金額について合意ができれば何も問題ありません。しかし、必ずしもうまく話合いができるケースばかりではありませんので、その場合は、家庭裁判所へ「養育費請求調停」を申し立てることになります。
調停では調停委員と呼ばれる人が両当事者の間に入り、話合いをサポートしてくれます。調停で合意ができれば問題ありませんし、仮に調停で合意ができなかったとしても、「審判」と呼ばれる手続きに移行し、裁判所が適切と考える養育費の額を定めますので、いずれにせよ支払われるべき養育費の金額が決定することになります。
⑵ 養育費の不払いに備えて
合意した養育費が任意に支払われ続ければ問題はありませんが、もしも養育費が不払いとなってしまった場合に備えて、養育費の金額を合意する方法は慎重に判断する必要があります。
取決めの方法としては、
・当事者間で協議書(合意書)を作成する
・公正証書を作成する
・調停または審判で金額を確定させる
といった方法が考えられるところです。
もっとも、仮に当事者間で協議書(合意書)を作成したものの不払いが起こり、相手方が督促にも応じないような場合には、合意をしたにもかかわらず、養育費の支払いがなされていないことを理由に訴訟提起を行う必要があります。他方、公正証書で合意を行った場合には、不払いが起こった際に、訴訟を介さずに相手方の給与や預貯金を差し押さえることが可能となるため、合意の方法として極めて有効です。