弁護士が粘り強く交渉を続け,協議離婚と子の引渡しを実現した事例
依頼者:妻/30代
相手方:夫/30代(外国籍)
経緯
性格の不一致及び宗教観の違いにより夫婦関係が悪化し,喧嘩が絶えない状況が続いていました。夫婦間の協議により,離婚自体については互いに合意していましたが,夫が妻に金銭を要求しており,条件面での折り合いがついていませんでした。
離婚が成立しないまま,妻が子を連れて家を出たことで別居が開始しました。
別居後,妻が子を保育所に預けていたところ,夫が妻に無断で子を連れ去り,行方が分からなくなりました。
当事務所には,子の引き渡しを実現して欲しいということでご依頼を頂きました。
当事務所の活動
子の引渡し調停等を裁判所に申立てるには,相手方の住所を把握していなければなりません。しかし,本事案では夫と子の居所が分からず,裁判所に子の引き渡し調停等の申立を行うことができませんでした。
幸い,電話連絡は可能であったため,弁護士が依頼者である妻の代理となり,電話で夫との離婚条件の交渉を2か月間続けましたが,突然,夫が音信不通となってしまいました。
弁護士が入国管理局に問い合わせを行ったところ,外国籍である相手方は子を連れて出身国に帰国してしまっていたことが判明しました。親の一方が外国に子を連れて帰ってしまった場合,ハーグ条約に批准している国であれば子の引き渡しを要求することが可能ですが,本事案では夫の出身国はハーグ条約に批准していなかったため,子の引き渡しの要求を行うことができませんでした。
解決は難航しましたが,弁護士が代理人として介入したことで交渉が複雑になった面もあり,弁護士のアドバイスとして,再度,ご本人同士での話し合いの機会を持つことをお勧めしました。その結果,夫が子を連れて日本に戻ることになりました。
日本への帰国後,夫に子とともに当事務所へ来て貰い,交渉を行った末,協議離婚及び子の引き渡しを実現することができました。
解決のポイント
相手方の居住地が不明であり,裁判所への申立ができず,相手方の母国がハーグ条約に批准していなかったことから,子の引き渡しの実現は難航しました。しかし,弁護士が粘り強く交渉を続けることで相手方から子の引き渡しの同意を得ることができました。
離婚条件については,一定程度相手方の意向を汲み,お互いが納得できるポイントを探りました。法律を使った解決が困難な場合でも,諦めず解決策を探ることで成果につながることも多いのです。